遺言・相続

遺言の意義

相続が発生した場合、遺産の分割方法として優先されるのは以下1〜3の順になります。

1.遺言書による指定遺言書は自己の財産についての最終的な意思表示であり、相続において最も優先される。
遺言書がない場合は、相続人の協議による分割や法定相続に従った分割となるため、恩人や動物愛護団体等の相続人にあたらない人や団体に遺産を残したい場合や、相続人間の分配割合を指定したい場合などは遺言書でその旨を記しておく必要がある。ただし、遺留分を侵害する部分については遺留分侵害額請求がされる場合がある。
2.相続人全員の合意「子供は受け取りを辞退して母親に全てを相続させる」「法定相続分のとおりに分ける」など。
3.法定相続法律上の基準。相続税や遺留分等の算定に使われる。もちろんこの割合どおり遺産分割してもよい。協議や調停が整わない場合、裁判所が法定相続分に従って遺産分割をする。

ただし、以下の場合については遺言書による指定よりも優先されます。

  • 遺言書と異なる遺産分割について相続人全員による合意がある場合
  • 正当な遺留分侵害額請求がされた場合

遺言書は、被相続人の意思の表明であると同時に、相続人の拠り所としての機能と紛争防止の役割も持っていると言えます。しかし遺言書を残したことによって新たな紛争を生むこともあります。
遺言を残すにあたっては、法定相続分や遺留分等を念頭に置いて全体的なバランスを考慮するとともに、付言(ふげん:遺言としての法的効力はなく、感謝の言葉やメッセージ的なことなどを書く部分)を活用して、なぜその分割内容に至ったかの理由を書き添えると理解が得やすくなります。

遺言の自由と制限

・遺言をするかしないか
・遺言の内容
・遺言の撤回、変更
これらは本人が自由に決定することができ、撤回も変更も何度でもすることができます。これらを「遺言の自由」といいます。
遺言は15歳以上であればすることができ、親権者等の同意は不要です。

ただし、遺言をするには以下の制限があります。
・遺言能力を有していないとならない
・形式上の法的要件を満たす必要がある
・公序良俗に反してはならない
遺留分を侵害している場合、遺留分侵害額請求を提起されることがある

遺言能力とは

遺言能力とは、遺言の内容とその効果を弁識するに足る能力のことです。
遺言作成時にこの能力を有していない場合、その遺言は無効となります。
遺言能力の有無は、遺言の内容、遺言者の年齢や障害など心身の状態、相続人等との関係、遺言書を作成するに至る経緯や動機などを総合的に考慮して判断されます。認知症の方であっても、遺言当時この能力を有していたと判断されれば遺言書は有効なものとして取り扱われます。
(弁識=物事の良し悪し、是非等を見分けて判断できること)

自筆証書遺言は改ざんや紛失などのリスクがあることから、遺言書を作成する場合は基本的に公正証書遺言をお勧めします。
ただ私自身もそうですが、後で内容を変える可能性がある場合に公正証書遺言を作ることは費用と手間の面から敷居が高く感じてしまいますので、そういう方はまず財産の整理(PC内データやログイン情報など含む)から始め、簡易的な自筆証書遺言を作成してそれを都度改良していく、というやり方もいいのではないかと思います。

公正証書遺言

公正証書遺言作成の流れは以下となります。

  • 書類等収集
  • 起案
  • 公証役場へ予約
  • 公証人との打ち合わせ
  • 公証人より遺言書案の提示・費用の提示
  • 遺言者による案の確認
  • 公証役場で公正証書遺言を作成

公正証書遺言は、公証人が遺言者の意思を聞き取った上でそれを法的効果のある遺言書としてまとめ、その原本を公証役場で保管するという最も信頼性が高い遺言方式です。遺言書の法的効果は担保され、改ざんや紛失のおそれもありません。

ただし、裁判においては公正証書遺言が無効とされた例も存在します(東京地裁平27.8.27、東京地裁令2.1.28他)。
無効とされた事例の多くは、遺言書作成時点で遺言者に遺言をする能力があったかどうかが争点になっています。裁判になった場合、遺言書を作成したときに公証人が知りえなかった事柄、遺言者と相続人の関係、遺言に至るまでの経緯、その遺言がもたらす効果など、さまざまな角度から総合的にその有効性が判断されます。そのため、公正証書遺言であっても有効性が覆ることは十分にあり得るのです。
そういったことにならないためにも、判断能力がしっかりしているうちに、きちんとした遺言書を作成しておくことが大切です。

自筆証書遺言

自筆証書遺言は、財産目録を除きすべての文章を自筆で書かなければなりません。
書き方や訂正の仕方などが決められた方式に則っていない場合は無効となるため、原則的にはおすすめできない遺言方式になります。

保管については、
・法務局の遺言書保管制度を利用(※遺言内容の法的有効性については保障されません)
・自分で保管
・信頼できる他者や士業の者に預ける
などが考えられますが、法務局の遺言書保管制度を使うのがおすすめです。費用もそれほどかかりません。

遺言書保管制度のメリットとして以下があります。
・検認不要(検認=家庭裁判所が行う遺言書の保全手続きで、およそ1〜2ヶ月ほどの時間を要する)
・改ざん、紛失のおそれがない
・相続人1名へ遺言書を保管している旨の通知がされる

遺言書保管制度以外は検認が必要です(他公正証書遺言も検認不要)。

基本的に公正証書遺言をお勧めしますが、公正証書遺言は書き直す場合に手間と費用がかかるので、最初は練習がてら自筆証書遺言を書いてみて、ある程度時間を経て内容が固まったと思えたら公正証書にするという流れでも良いように思います。

自筆証書遺言作成の流れ
  • 書類等収集
  • 起案
  • 自書による遺言書作成・押印


熟慮期間

熟慮期間=「被相続人の死亡を知り、自分に相続権があることを知った時から3ヶ月以内」
この期間内に、相続人は「単純承認」「限定承認」「相続放棄」のどれかを選択することとされていて、何もしないまま期間が過ぎたら単純承認したものとみなされます。

遺留分

原則被相続人は遺言により財産を自由に処分できますが、例えば家族以外の人や団体に全財産を譲るというような遺言がなされた場合、残された家族が困窮してしまうため、「兄弟姉妹を除く法定相続人」へ一定の遺産を保障する制度が設けられています。この保障分のことを「遺留分」といいます。

遺留分
・被相続人の直系尊属(父母、祖父母):3分の1
・それ以外:2分の1

<例>被相続人が慈善団体に遺産を全額寄付するとの遺言を残して死亡
【相続人が配偶者と子2人の場合】
・慈善団体:遺産の2分の1
・配偶者:遺産の4分の1
・子A:遺産の8分の1
・子B:遺産の8分の1

【相続人が配偶者と直系尊属1人の場合】
・慈善団体:遺産の2分の1
・配偶者:遺産の6分の2
・直系尊属:遺産の6分の1

【相続人が兄弟姉妹のみの場合】
・慈善団体:遺産の全て

遺留分侵害額請求

遺留分は当然に与えられるものではなく、期限内に内容証明郵便等を使って請求をする必要があります。
請求期限は「遺留分があることを知った時から1年、相続開始時から10年」で、それを過ぎると時効にかかってしまいます。

相続欠格

以下のような行為は民法に定められた欠格事由にあたり、該当する行為をした者は相続人になることができません。

  • 自分が有利になるために被相続人等を死亡させ、または死亡させようとして刑に処せられた者。
  • 被相続人が殺害されたことを知っていながら告発しなかった者。
  • 被相続人に対し詐欺や強迫を用いて遺言をさせたり妨害をしたりした者。
  • 遺言書に手を加えたり隠したり破棄した者。

相続廃除は被相続人が裁判所に請求する必要がありますが、相続欠格は欠格事由に該当する場合法律上当然に相続権を喪失し、申し立ては不要です。

・被相続人:亡くなった方
・相続人:被相続人の財産や負債などを受け継ぐ方

相続廃除

上に書いたように、相続廃除は被相続人が家庭裁判所に請求しなければなりません。

  1. 遺留分がある推定相続人(配偶者、子(または代襲相続人に当たる孫)、直系尊属(親、祖父母等)のうちで、相続人になると推定される人のこと。兄弟姉妹は遺留分がないので当たらない)で、
  2. 推定相続人が、被相続人に対して虐待、重大な侮辱を与えた場合、または著しい非行のあった場合に、
  3. 被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができます。
相続放棄
  • ①熟慮期間内(相続開始を知った時から3ヶ月以内)に、②被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に、③申述書を提出
  • 熟慮期間内に何もしなかった場合は単純承認したものとみなされる
  • 申述書と記入例が裁判所のHPからダウンロードできるhttps://www.courts.go.jp/saiban/syosiki/syosiki_kazisinpan/syosiki_01_13/index.html

相続税課税割合はおよそ10%(令6年度)

相続税課税割合とは、人が亡くなったときに相続税が発生する割合のことで、令和6年度の全国平均は10.4%でした。10人亡くなったうちの1人は相続税対象、9人は無関係ということになります。当然収入が多く不動産価格が高い都市部と人口密度の低い地域では差があり、東京都はおよそ20%、千代田区はおよそ50%ほどになります。
世界的に見ると日本は課税割合も税率もトップクラスであり、かつ、税収入に占める相続税及び贈与税の割合も世界最高クラスです。そして今後超高齢化社会が続き死亡者が増えていくなかで当該課税割合も増加が続くものと予想されています。

参考:国税庁 令和6年分相続税の申告事績の概要(PDF)

個人的には富の再分配機能として相続税はあった方が良いと思いますが、アメリカほど(基礎控除額1,500万ドル)とはいかずとも課税対象を下に広げすぎないようにしてほしいと考えています。

タイトルとURLをコピーしました